リスティング広告とサービスの相性は「設計するもの」である理由
ECスプレッドの菅原です。
ホームページを事業活用するためには集客が必要です。
以前の記事で、ホームページに見込顧客を集客するためには「SEM」という手段があるとお伝えしました。
SEMのリスティング広告は、見込顧客を集める上で非常に費用対効果の高いアプローチです。
費用・対象エリア・キーワードなどを詳細に設定できるので、検討度合いの低い顧客(潜在層)から、検討度合いの高い顧客(顕在層)まで幅広くリーチできます。
ホームページに集客の課題がある企業様であれば「費用対効果が高いならうちもやってみようかな?」と考えるかもしれません。
費用対効果が高いことは間違いないのですが、リスティング広告には相性の良いサービスと悪いサービスが存在しています。
本記事では「リスティング広告とサービスの相性」と「相性の悪さを補う設計」についてご紹介致します。
目次
リスティング広告と相性の悪いサービスの特徴
一般的に以下のような特徴を持つサービスは、リスティング広告と相性が悪いと言われています。
- 指名検索でない
- 競争優位性が低い
- 粗利が低く、リピート率が低い
これらに加えて「WEB上での効果測定が難しい」という課題もあります。
ゴール設定がWEB上で完結するなら広告経由での流入からCV(成約)まですべて可視化できますが、飲食店や歯医者のような店舗ビジネスの場合、電話での注文や予約などは効果測定しづらいです。
まぁ店舗ビジネスで多く使われているチラシやDMなどのオフライン広告も効果測定がしづらい媒体ですが、そのことはあまり重要視されませんよね。
と考えると、効果測定を重んじるかどうかは勘所ではないとも言えます。
ですので「効果測定が難しい」は参考程度に覚えておいてもらって、これより上記3点を順番に解説していきます。
指名検索でない
社名やサービス名などの指名検索ではなく、カテゴリーやジャンルなどの抽象的なキーワードに広告をかけた場合はCVに至りにくいです。
このことを説明する前に、ニーズとウォンツの考え方を見て頂きたいと思います。
- ニーズ:顕在的なニーズ(欲しいものが分かっている
- ウォンツ:潜在的なニーズ(欲しいものが分かっていない)
もしかすると他で言われている定義とニュアンスが異なっているかもしれませんが、今回は以上のように解釈して話を進めていきます。
例えば「北欧風テーブル」を探しているユーザーが、同キーワードで検索したとします。
このユーザーは「北欧風のテーブルが欲しいけど、どの商品が欲しいのかは分からない」=「ウォンツ」の状態になります。
もしこのユーザーに広告経由で北欧風テーブルの商品ページを見てもらえたとしても、ニーズを満たしてあげられる可能性が低いことはイメージして頂けると思います。
アプローチとして間違いではないのですが、ウォンツのユーザーにサービスを提案してもCVには至りにくいです。
なぜかというと、何が欲しいのか分かっていない人は情報収集の段階にあるため、まだ購入モードになっていないことが多いからです。
これが「北欧風テーブル〇△□」という指名検索をしたユーザーならニーズが明白なので、購入モードになっている可能性も大いに考えられます。
こういった理由で、指名検索でないキーワードにかける広告はCVR(成約率)を考えたら相性が良いとは言えません。
競争優位性が低い
どこで買っても同じものを手に入れられるサービスは、CVに至りにくいです。
地域でも購入できる生活用品や書籍などが分かりやすい例です。
「どこで買っても変わらない」前提がある中で自社を選んでもらうためには、競合とは異なる優位性を持つ必要があります。
顧客に選んでもらうためには戦略が欠かせません。
こちらの記事で差別化戦略についてまとめています。
利益とリピート率が低い
1件のCVから得られる利益が少なければ当然、広告予算も少なくなります。
その限られた広告予算内でCVに至らなければ、マイナスが蓄積していきます。
リスティング広告を出稿する上ではCPA(顧客獲得単価)が非常に重要です。
もっといえばリピート率も考慮し、LTV(顧客生涯価値)も勘案しなくてはなりません。
リスティング広告の数値設計は細かく行う必要があるのですが、取りあえず利益の低いサービスは相性が悪いと判断して良いです。
リスティング広告との相性の悪さを補う設計とは?
では次に「相性の悪さを補う設計」という考え方についてまとめていきます。
- 指名検索でない
- 競争優位性が低い
- 粗利が低く、リピート率が低い
これらのウィークポイントを補うためには、ビジネス全体を考える必要があります。
私がいち消費者として、リスティング広告経由でサービスを利用した話を例に挙げてみます。
購買のきっかけはリスティング広告でした
今月中に車検が切れるので、車検をとるために「秋田市 車検」で検索をしました。
そこで表示されていた車屋さん(※以下A社)の広告をクリックして、サービス内容と料金を確認しました。
このときの検索意図は当然「秋田市で車検をやってくれるところを探す」で、どこの車屋さんを選ぶかはまったく決めていませんでした。
次にA社の情報を基に、他の広告や自然検索で上位表示されている車屋さんと比較検討をしました(5分くらい)。
その結果A社が一番安かったので、それ以上迷うことなく予約をしました。
私の購買動機を整理すると以下のようになります。
- 車検が通ればどこでもいい
- できるだけ安い方がいい
- これ以上探すのが面倒
試しに「秋田市 車検 格安」というキーワードで検索したところ、こちらでもA社の広告が表示されていました。
車検の依頼先をリスティング広告経由で決めたのだが、同一商圏で最安値を提示出来るならめちゃめちゃCVR高そう。
多くの人は「車検通ればいい」と思って選ぶはずなので。
例え最安値だとしても、ここの段階で顧客に選んでもらうことが肝。
なぜなら点検をすれば追加作業が必要になることも多いので。— スガワラナオユキ (@NaoyukiSugawara) 2019年6月17日
「格安」というキーワードを含めた場合は特に、検索キーワードと提供サービスが一致しているのでCVRは高いと考えられます。
格安と謳っておきながら、他社の方が安い場合はCVRが下がるでしょう。
今回私は価格を重視して選びましたが、生活者の判断基準には色んな選択肢があります。
- 安心できる
- 付き合いがある
- 価格が安い
- 家から近い
- 対応が親切
- 短期間で仕上がる
車屋さんはこれらのニーズを考慮してUSPを強化していくことになるのですが、ファーストステップとしては選んでもらうことが最も重要だと考えられます。
部分ではなく全体を考える
「たしかにそうかもしれないが、格安車検から得られる利益で捻出できる広告予算は少ないので、CPAが高くなってしまうのではないか?」という疑問が湧いてくると思います。
はい、その通りです。笑
ですが先に述べたように、ウィークポイントを補うためには全体を考えることが大切です。
「最安値で選んでもらい、入庫後の点検で追加作業や関連商品も利用してもらう」という設計。
というわけで、
私の車検にも追加作業が入ることになりました。笑この段階までくれば他の業者と比較するハードルは高くなるので、例えば作業費や部品代が割高でもそのまま依頼しちゃうというね。
— スガワラナオユキ (@NaoyukiSugawara) 2019年6月17日
A社の強みが「価格」であれば、価格で選ぶユーザーを高い確率で獲得することができます。
ただ実際は、車に不具合があれば直さないと車検が通りませんので、その場合は追加作業(費用)が必要になります。
「価格訴求で集客し、他のサービスで単価を上げる」というイメージですね。
- フロントエンド商品:格安車検
- バックエンド商品:通常車検および関連サービス
たしかに格安車検だけで終わってしまえば赤字になるかもしれません。
ですが、広告経由で訪れたユーザー全員が格安車検で済むということはないでしょう。
広告経由で訪れたユーザー全体が利用したサービスを考えてマイナスになっていなければ問題なしです◎
ウィークポイントを補う設計は以下の通りと考えられます。
- 「どこで買っても同じものが手に入る競争優位性の課題」を「価格」でカバー
- 「指名検索」じゃなくても価格の優位性が決め手となる可能性は高い
- フロントエンド商品は「粗利が低い」が、バックエンド商品を買ってもらいやすい
このように、車検はリスティング広告に不向きな要素を含んでいるサービスですが、効果的に活用できるやり方もあることが分かります。
CPAが高くても顧客を獲得した方が良い理由
格安車検だけで終わったCPAの高い顧客も大きな利益をもたらします。
利益は色々と考えられますが、「リストを獲得できる」ことと「価格以外のUSPをアピールできる」ことの2点にフォーカスして簡単にご紹介致します。
リストを獲得できる
新規顧客の獲得には、既存顧客の5倍のコストがかかると言われています。
ということは、CPAが高くなるのはそもそも当たり前のことなのです。
そのときにバックエンド商品を利用してもらえなかったとしても、リストを獲得できることが一番のメリットです。
車はオイル交換や、スタッドレスタイヤの買い替えや、車検といった消費のタイミングが定期的に訪れます。
顧客リストを得れば適切なタイミングで「いかがですか?」とアプローチが出来るようになるので、顧客にとっても車屋さんにとっても良い関係を築くことができます。
価格以外のUSPをアピールできる
価格訴求は「安さ」をきっかけに選んでもらう戦略ですが、顧客が大切に感じることは価格だけではありません。
A社も「安心感」や「技術」や「親切さ」を競合に負けないくらい徹底するように心がけていると思います。(※実際丁寧でした)
最安値をきっかけに自社を選んでもらい、その後の接客で「ここのお店は価格だけじゃなくて対応も丁寧だな」と感じてもらえるおもてなしが重要です。
顧客は購入によって「車検」という金銭的価値を得られるのは当然ですが、お店からおもてなしを受ければ「体験価値」も得られます。
おもてなしのような体験から得られる価値のことをカスタマーエクスペリエンス(CX)といいます。
カスタマーエクスペリエンスを向上することによって、顧客はその車屋を気に入り、リピーターになってくれる可能性が高まります。
もし自社のUSPを「安心・親切・丁寧さ秋田市No.1!」としたとしても、来店してもらわないことにはその良さ(体験価値)を感じてもらうことはできません。
戦略があれば相性の悪さを補うこともできる
リスティング広告の主目的はCVにありますが、CPAや費用対効果にばかり目を向けてしまうと、ビジネスに有効活用する方法を見出すことが難しくなります。
部分で捉えると「相性が悪いからやめた方が良い」に留まりますが、全体で捉えると「戦略があれば有効活用できる」という発想が生まれます。
広告運用は「部分(戦術)」で、ビジネスの設計は「全体(戦略)」というイメージです。
戦術よりも戦略が重要です。
リスティングの広告文めちゃめちゃ上手だなーと思ったらフランチャイズなのね。
どうりで〜って感じ。
知見のある業者が広告運用しているはず。この設計は秋田の会社でも勿論マネできる。
取り組むか取り組まないかの違い。— スガワラナオユキ (@NaoyukiSugawara) 2019年6月17日
今回ご紹介した設計の事例は、再現性が高いんじゃないかなと感じました。
もちろん「そのままそっくりマネれば良い」というほど単純ではありませんが、しっかりと戦略をもって設計すれば同じような成果が期待できると思います。
ちなみに、リスティング広告は専門家に依頼した方が効率的です。
ホームページ制作会社が存在するように、広告運用にも専門の会社が存在しています。
それほど専門性の高い分野ということですね。
自社運用もありですが、知見がなければ広告費がムダになるだけでなく、改善もできません。
広告運用は業務の勘所ではないので、一から運用ノウハウを身に付けることも現実的ではないと思います。
ただ、広告運用業者は大きな規模の案件を扱っていることが多いため、対策したいキーワードが少ない場合は割に合わない可能性もあります。
弊社はキーワード数が数十程度の小さな案件から運用することも可能です。
もしリスティング広告の出稿を検討されているなら、お気軽にご相談ください。