なぜ御社はウェブ投資に踏み切れないのか?
ECスプレッドの菅原です。
秋田の短い夏、あっという間に終わって9月に入りましたね~。
今回は少し業界に関する突っ込んだ話をしてみたいと思います◎
昨年のインターネット広告費は約1兆8千億円にも上り、今年のインターネット広告費はテレビの広告費を抜くと言われるほどインターネット業界は成長し続けています。
そういった背景があるので、多くの事業者さんは「ホームページを制作すること」や「WEBを強化して事業に活用していくこと」の必要性を理解しています。
しかし、2019年令和時代においてもWEBへの投資に二の足を踏んでいる事業者さんは少なくありません。
弊社はWEBに関わっている立場なので「今の時代WEB対策は必須ですよ!」と扇動するのは簡単なのですが、そのように強調するつもりはありません。
ただ「なぜWEB投資に踏み切れないのか?」と言うと、WEB業界特有の事情があるからだと感じています。
ですので、本記事では「WEB投資に踏み切れない事業者さんが抱く悩み」にフォーカスし、それに対していち制作会社の立場から所見をまとめてみたいと思います。
目次
すべての問題は「よく分からない」に行き着く
ホームページを保有していない事業者さんはまだまだ多いです。
各社が多額のWEB投資を行い、しのぎを削り合っている業界の中に居ても、ホームページすら持っていない事業者さんはいまだに散見します。
例えば昔から地域に根差して経営している歯医者さんには多い印象です。
WEBに投資をしない理由は様々だと思いますが、一例を挙げるとすれば・・・
- 制作費が高いと思っている
- 費用対効果が見えない
- 内容を理解できていないものに費用を支払いたくない
このような考えがあると思います。
共通しているのは「WEBのことがよく分からない」だと言えるのではないでしょうか。
「よく分からない」にはたくさんの理由がある
一口に「よく分からないから踏み切れない」と言っても、その結論に至る背景にはたくさんの理由があります。
弊社が顧客から話を聞かせてもらった中で感じた傾向は以下の通りです。
- WEBに詳しくなる必要がない
- 相対的に判断できない
- クライアントと制作会社に大きなリテラシーギャップがある
この3つの理由について考えてみたいと思います。
1.WEBに詳しくなる必要がない
決裁権者(事業主など)がWEBの重要性を十分に理解していても、「WEBそのものについて詳しいか?」と言えばそうではないと思います。
事業におけるWEBの位置付けは、言ってしまえば「手段」「ツール」に過ぎません。
WEBは重要であっても本務ではないので、決裁権者はWEBに詳しくなる必要性がないのです。
2.相対的に判断できない
人が何か買い物をするときは、相場感に基づき価格に見当をつけるのが普通です。
「相場感」という情報は意思決定に大きな影響を与えるので、人は相対的な比較検討によって購買を判断しています。
しかし、WEB業界は相場にバラつきがあって、相対的な比較検討が困難です。
誰しもが損をしたくないので「成果物の品質が同じなら出来るだけ安い制作会社に依頼したい」と考えるものですが、ホームページ制作会社によって費用も品質もバラバラです。
見積りを提示されても「適正なのか?」「相場よりも安いのか? or 高いのか?」が分かりません。
制作会社が納得できるように説明したとしても、やっぱりクライアントは相対的に比較検討をしたいワケです。
しかし、WEB制作には比較検討しづらい理由があります。
- 詳細な金額は見積もりを取るまで明らかにならない
- 複数の会社から見積もりを取って説明を受けるのは面倒
- 見積もりを取った後に断るのが面倒
このようなことから、ホームページを制作したいと考える事業者さんは、制作会社に見積もりを依頼する手前の段階で二の足を踏んでいることが多いと考えられます。
3.クライアントと制作会社に大きなリテラシーギャップがある
クライアントは自社サービスに関するプロであっても、WEBのプロではありません。
サービスの善し悪しを判断するための知識が無いので、クライアントと制作会社の間には大きなリテラシーギャップがあります。
例えば、クライアントは「予算50万円位で毎月問い合わせがくるようなホームページを作ってもらいたいな」といった具合に見当を付けると思います。
制作会社がクライアントの希望に沿った提案をすると、見当通りの見積もりになることはほぼありません。
「思っていたより高かった…」となることは多いですね。
制作サイドがどれほど順当に試算しても、「これはやっておいた方がいいですよ」と誠意を持って提案したとしても、リテラシーギャップがあるので溝は埋まりにくいというワケです。
リテラシー不足によって懐疑的になる
「WEBは相場も分からないし、費用対効果も分からないし、そもそも全体的によく分からん」
このように考えるのも無理はありません。
「よく分からない」状態で、見当外れの見積もりを提示されると「もしかして騙されているんじゃないか…?」と懐疑の念を抱くこともあるかもしれません。
せっかく投じた費用がムダになっては困るので、決裁権者は簡単にWEB投資へ踏み切れないのです。
この業界は「決裁権者にどのようにして理解してもらうか次第」なところはあります。
リテラシーギャップを悪用した詐欺レベルの事例
クライアントが「WEBのことがよく分からない」という状態は、仕方のないことだと思います。
しかし、リテラシー不足を悪用した制作会社も世の中には存在しているので注意は必要です。
お客さんのサイトを作った時にこっそり「no index」を仕込んでおいて「なかなか検索出てこないでしょ?やっぱり広告した方がいいっすよ」って広告を出させて手数料をピンハネする会社が存在すると聞いて会いたくて震える。
犯罪レベル。
— 中尾豊@3冊目出版執筆中/Web集客のプロを育てるプロ/LPO・Webライティング (@propo0202) 2019年4月6日
要約すると…
- ホームページ納品時に「noindex」タグを埋め込む(※検索結果に表示させない設定)
- 制作会社がクライアントに「検索結果に表示されていませんね。これだと売上が上がらないので広告を出稿した方が良いですよ」と不安を煽る
- クライアントに広告を出稿させて、制作会社は広告運用手数料を得る
かなりあくどい手口です。
クライアントは「検索結果に表示されないホームページ制作費」+「広告費」+「広告運用手数料」を捻出しなければならない状態を強いられているということです。
続きを見てみましょう。
他にも同様の経験があったというリプライがありますね。
私個人的には「そんな会社あるの?!」と驚愕しましたが、よくよく考えると「クライアントのリテラシー不足は悪用しようと思えば悪用できる」のがこの業界です。
「費用を抜き出せるところは抜き出してしまおうぜ!」となれば課金ポイントは相当あります。
それも、顧客が納得してしまう根拠と論理(=正義)を示すことが出来るので始末が悪いです。
懐疑的になってしまうことは、ある意味正しい反射なのかもしれません。
知識がないと問題に気が付かない
「顧客が納得してしまう根拠と論理を示すことが出来る」例として、広告運用代行を挙げてみたいと思います。
広告運用代行手数料が「出稿費用の〇%」という形をとっているなら、クライアントへ適当な論理を説いてCVR悪くても幅広く出稿させて広告費(=代行手数料)を増やすようなことって有り得そうな希ガス…🤔
— スガワラナオユキ (@NaoyukiSugawara) 2019年8月29日
「広告運用代行業者が多くの手数料を抜き出す方法」という仮定で例示してみます。笑
- 出稿金額の20%で運用代行を契約
- クリック数(出稿金額)の増加に伴って手数料も増加する収益モデル
- CV(成約)に結びつきにくいキーワードも戦略の一環として盛り込む
- CPC(クリック単価)の高いキーワードは大歓迎
- クライアントの「CVR(成約率)悪いじゃないですか」という問いに対して「認知のためには必要です」的な論理を説く
このようにクライアントのリテラシーが低いと、あたかもそれが正しい戦略であるかのような説明を成り立たせることが出来ます。
もし多くの手数料を得るためにこういうことをしている会社があるとすれば、安心して任せることなんて出来ませんよね。
以前、ECサイトでハイブランドの商品を販売している方(※以下Aさん)のリスティング広告をサポートしたことがありました。
「広告費ヤバいのに、まったくCVに至らないんですけど…」ということで、設定を確認したところ、広告費をガンガン使うような戦略設計となっているようでした。
家具会社で広告運用を担当していた方(※以下Bさん)に任せていたそうです。
Aさんは広告運用に対しての知識が無いので意見することも出来ず、そのやり方は仕方のないものだと思って進めていました。
私に対してのAさんからの要望は「なるべく費用をかけずに、CVに至るようにしたい」でした。
要望に沿うような形ですべての設定を見直してリスタートしたところ、広告出稿2日後に初CVを獲得しました。
この結果から言えるのは「Aさんはリテラシー不足によってBさんの戦略ミスに気が付かなかった」ということです。
Bさんに悪意があったワケではありませんが、クライアントと提供会社に生じるリテラシーギャップは悪用されたら怖いものだなと感じました。
リテラシーギャップを埋める3つのポイント
クライアントと制作会社のリテラシーギャップの溝は埋めにくいです。
理想を言うと「クライアント自身がリテラシーを高める」なのですが、弊社としては「決裁権者はWEBへの理解力は必要だが、WEBそのものについて詳しくなる必要はあまりない」と考えています。
しかし、それだけだと不誠実な制作会社に割高な費用を支払ってしまうリスクもゼロではありません。(そういう会社は少ないと思いたいですが)
「よく分からない状態」でカモにされないために気を付けておきたい3つのポイントを紹介したいと思います。
「達成したい目標」や「課題」を伝えて設計図をもらう
ホームページ制作の場合、ホームページを通して達成したい目標を制作会社に伝えます。
「月に○件の問い合わせがくるような仕組みを作りたい」といったイメージです。
その目標を達成するための方針を説明してもらうと良いです。
「中々問い合わせが増えない」といった課題感があって、サイトのリニューアルや修正やブラッシュアップを検討する場合は、その課題を解決するための方針を説明してもらって下さい。
詳細に聞いても中身のことまではよく分からないと思いますが、しっかりと設計図を示してもらうことが大切です。
分からないことは納得できるまで聞く
WEBは専門性が高い上に専門用語が多いので、たくさんの「よく分からない」に直面すると思います。
詳細な内容まで理解する必要はありませんが、納得できるまで向き合うことは必要です。
「何を納得できるまで聞けばいいのか?」については、目的によって異なります。
目的を明確にできればおのずと知りたいことが湧いてくるので、まずは目的を定めて頂ければと思います。
相見積もりを取る
「相場も分からないし、費用対効果も分からない」を解消するのが相見積もりです。
- 「達成したい目標」や「課題」を伝えて設計図をもらう
- 分からないことは納得できるまで聞く
- 見積もりをもらう
この作業を各依頼先候補に対して行います。
見積もりを取る面倒な問題は解消できませんが(スミマセン)、相対的に比較検討が出来るようになります。
ただ、ここでの相見積もりは「値下げ交渉をするため」ということではなく、あくまでも自社に合った提案を選りすぐるための手段と捉えて頂ければと思います。
値下げ交渉をしても、優良な制作会社には響きません。
かえって「面倒なお客さんとは関わりたくない」と敬遠されてしまう可能性もあります。
ちなみに、クラウドソーシングを利用すれば一つの案件に対して複数の提案が集まる傾向にありますので、簡単に相見積もりに近い情報を並べることできます。
まとめ
「WEB投資に踏み切れない事業者さんが抱く悩み」と、それに対する所見についてお伝えしました。
WEBというサービスが一般的になった時代に、これほどクライアントと提供会社にリテラシーギャップのある業界も珍しいよな~と改めて感じました。
WEB制作はフリーランスも含めると玉石混交です。
失敗しないためにはある程度のリテラシーは必要になってきますので、面倒だとは思いますがポイントは押さえて頂けたらと思います◎
本記事でお伝えした内容がまだWEB制作に踏み切れていない事業者さんの参考になれば幸いです。